長崎が抱える問題として、多くの人が指摘しているのが人口減少です。高齢化による自然的な減少はもちろん、若者の県外流出も顕著で、産業力・経済力の低下か懸念されています。こうした状況は、観光事業にも影響を及ぼすと予測されています。観光事業でも特に危惧されているのが、長崎観光の目玉ともいえる夜景への影響です。長崎の夜景は、土地の形状を最大限に活かした、至高の美しさで知られており、世界新三大夜景にも認定されています。稲佐山の展望台からの眺望は、山から港へと続く家々の灯りがひしめき、まるで宝石を散りばめたような景色が広がります。しかし、この宝石のような夜景も、人口が減少すれば維持することが難しくなります。

長崎の夜景が際立って美しい理由には、特有の地形が関係しています。長崎の山々に囲まれた地形は、山から海へと続くすり鉢のような地形となっており、それがまるで海へなだれ込むかのようなダイナミックな夜景を再現しているのです。しかし、このすり鉢状の地形は、言い換えれば坂が多い平地のない街ということです。一般市民からすると、ちょっとした外出や買い物にも、坂道および階段を上り下りしなければならず、高齢者には大きな負担となっています。これらの理由によって、坂の傾斜が激しい街では空き家が増加している現状があります。

そんな中、地域では夜景の景観保全のため、歴史的建造物のライトアップや街路灯の設備などの対策が進められています。こうした夜景保全活動とともに、坂の街でも暮らしやすい道路整備や雇用受け皿の充実、魅力的な街開発などの工夫が求められています。暮らしのインフラ整備が進めば、生活しやすいうえに自然・夜景も美しい土地として、人気の移住先になる可能性は一気に高くなるでしょう。

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